こんにちは、たっきーです!
たきログでは個人資産1000万円をもつ専業主婦が、書籍から学んだ金融知識を発信しています。
本日は『お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた 予備知識のいらない経済新入門』(田内 学 著)の紹介です。
日本政府の借金は1000兆円だけど、
大量に借金しても財政破綻しないのはなんでなの?
あなたのそんな悩みを解決します。
- 紙幣の歴史からみるお金の意義
- 経済の本質は”お金”ではない話
- 日本政府の借金が1000兆円でも財政破綻しない理由
著者の田内学氏は、東京大学大学院(情報理工学系研究科)を卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社にて16年間金利トレーダーとして活躍された方です。
日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事し、日銀による金利指標改革にも携わっています。(著者紹介より引用)
それでは、早速いきましょう!
お金のむこうに人がいる(要約)|経済の本質とは?
『お金のむこうに人がいる』は、専門用語なしで読める経済の入門書です。
「誰が働いて、誰が幸せになるのか」というあたりまえのことを考えるだけで、
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
経済はシンプルで直感的になる。
資本主義ど真ん中のゴールドマン・サックスで働いた著者が、突き詰めた結論。
それは『経済とはお金の話ではなく、助け合い(労働)の話である』ということでした。
「あれ?道徳の話?」と感じるかもしれませんが、決してそうではありません。本書を読了した後は、年金問題や少子化問題、日本政府の借金の根本原因がより明確になります。
今回は、冒頭部分を中心にご紹介します。
お金とは何か?
お金の価値は”働く人”がいてこそ発揮される
現代で「お金」という言葉に続くのは「稼ぎ方・増やし方・貯め方」の三拍子です。
しかしあなたがお金を稼いで、増やして、貯めて、いざ使おうという時に、働く人がいなければそのお金には何の価値もありません。
平日に働いて土日に休めるのは、土日に働く人がいるからです。
同じ構図が、年金問題にも当てはまります。
老後に休めるのはあなたが若い内に働いたからではなく、「老後にあなたの代わりに働いてくれる人がいるから」です。働いてくれる人(現役世代)がいなければ、お金は成り立ちません。
働く人がいなければ、お金は力を失う。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
お金の成り立ち
まずは紙幣の歴史について、かんたんに解説します。
紙幣とは”金の預かり証”として始まりました。重たい金銀を両替商に預かってもらい、発行された「預かり証」を取引に使う。これが紙幣の前身です。
つまり紙幣とは、もとを辿ればチケット(引換券)だったのです。
その後、明治時代での地租改正(1873年)により「税の支払いを円貨幣でしか認めない」という掟が定まったことで、急速に紙幣が普及しました。(それまではお米などによる支払いだった)
時が経つと、両替商は日本銀行(1882年 誕生)となります。
日本銀行が無限に紙幣を発行できるのは良くないので、現代では「金」の代わりに「日本国債」を保有することになっています。
貨幣価値を持った引換券は、時代の中で”引換券”という役目を終え、現在の”紙幣”へと変貌していきました。
日本政府が発行する債券。日本政府の借金の借用証書のようなもので、保有していると定期的に利子がもらえて、一定期間後に元本が返済される。(本書より引用)
たとえば日本銀行が新たに10兆円を発行する場合、その紙幣で国債を10兆円分購入する。
税金が社会にお金を循環させている
紙幣は”ジャイアンのリサイタルチケット”と同じ構図です。
ジャイアンのリサイタルチケットがいつも完売するのは「買わないとジャイアンに殴られるから」。
実は、私たちが生きる現代社会でも、紙幣がないと刑務所に入れられてしまいます。
私たちがなぜ紙幣(お金)を欲するのかというと、「円貨幣で納税しなければならないから」です。
そして集められた税は、「みんなのために働く人たち」に支払われる。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
個人ではなく社会の目線で俯瞰して見ると、「税金が社会全体にお金を循環させている」ことがわかります。
お金とは個人で見たときには価値があるが、社会で見たときに価値はない
(社会で見たときのお金とは、労働を確保するための手段に過ぎない)
すべてのモノは労働によって作られる
新国立競技場は予算が作り上げたのか?
新国立競技場の予算は1250億円でしたが、同じ規模で建設されたのがエジプトにあるクフ王のピラミッドです。(現代人の手作業だと4兆円に跳ね上がる)
しかしピラミッドの建設において、お金は1円も支払われていません。
絶対的な権力のもとピラミッドは建設され、労働者には食料や衣服、ビールなどの対価が支払われました。
必要なのは、予算を確保することではなく、労働を確保することだったのだ。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
すべてのモノは、”労働”によって作られます。
お金を中心に考えると、まるで予算が競技場を作ったように感じてしまう。
そしてお金のむこうにある”人の労働”を忘れてしまいます。
僕たちはつい、お金を使ってモノが手に入ると感じてしまう。しかし、このときの「使う」は、「消費」ではない。自分の財布の外を見れば、お金は他の財布へ流れていることに気づく。
あなたが消費しているのは、お金ではなく、誰かの労働だ。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
新国立競技場の予算は、建設会社にはじまり、資材をつくる企業や最終的には鉄鉱石を採掘する人にも流れていきます。
お金を流せば、自然に労働が集積され、どんな複雑なものも作り上げることができる。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
お金がもつ2つのコミュニケーション力
以上のことから、お金は2つのコミュニケーション能力を持つことがわかります。
- 交渉力
- 王様のような絶対的な権力がなくても、また言葉が通じなくても、提示された額を払えば他人に働いてもらえるという交渉力
- 王様のような絶対的な権力がなくても、また言葉が通じなくても、提示された額を払えば他人に働いてもらえるという交渉力
- 伝達力
- お金を流せば自然に労働が集積され、複雑なものでも作り上げることができるという伝達力
私たちは、”見知らぬ人に働いてもらうために”お金が必要なのです。
- 誰かの”労働”がモノをつくる(お金がつくるわけではない)
- お金の価値とは、将来他人に働いてもらえること
価値があるのに価値がないもの
私たちは2種類の価値を使い分けて暮らしています。
ひとつは「価格」、もう一つは「効用(自分がどれだけ満足したか?)」です。
本来「モノの価値」とはその人にとっての「効用」で測るべきものですが、効用は人それぞれに異なります。
そこで「効用の代用」として用いられるモノサシが「価格」です。
つまり高額なモノが、必ずしも”良い商品”であるとは限らない。
たとえば、福袋で20万円の革ジャンが3万円になっていると、”お買い得”でつい買いたくなってしまいます。
しかし開けてみるとヘンな色の革ジャンで結局全然着なかった、なんてことも。こんな経験ありますよね。
人を幸せにするのはモノの「価格」ではなく、「効用」です。
あなたがその商品に対して「効用」を感じないのであれば、どれだけ高額でもそれはあなたにとって価値のないものなのです。
モノの効用が、誰かを幸せにする。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
人を幸せにするのはモノの「価格」ではなく「効用(自分がどれだけ満足したか?)」
国の借金が1000兆円でも日本が財政破綻しない理由
日本政府の借金は、1000兆円を超える。ご存知の方も多いと思います。
多額の借金を抱えながらも日本がギリシャやアルゼンチンのように財政破綻しない理由を解説します。
「預金」という言葉のトリック
まずは、私たちに身近な「預金」について考えます。
現在、日本で発行されている紙幣の量は120兆円(=現金の量)。
対して日銀が発表した統計によると、2020年12月末時点の個人と企業の預金残高は1253兆円にのぼります。
なぜ120兆円が1253兆円になったのか。
それは「預金」という言葉にトリックにあります。
私たちは「預金」と聞くと、銀行にお金を預かってもらっているという認識が大きい。
しかし私たちが預けたお金は、そっくりそのまま銀行に保管されているわけではありません。
実際は「貸付」といって、誰かに貸すためのお金として使われています。
僕たちは、お金を銀行に「保管」してもらっているのではない。貸しているのだ。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
預金とはつまり「貸金」であり、銀行側から見ると個人や企業の財布から「借金している」ということになります。
預金大国 = 借金大国
下図の通り、銀行が儲けを出す(=預金を増やす)には誰かに借りてもらうしかありません。
僕たちは、ただ貸し借りを大きく膨らませているだけなのだ。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
そして日本の中でもっとも借金を膨らませているのが日本政府で、その額は1000兆円を超えます。
つまり政府の借金が増えたからこそ、私たちの預金は潤っている。
でなければ1000兆円分が税金として徴収されて、私たちの預金は1000兆円分減っているはずなのです。
使ったお金は消えてなくなるのではなく、どこかに移動している。
田内学.お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門.ダイヤモンド社.
政府の借金した1000兆円も、個人の財布と企業の財布に移動しただけだ。
- 「社会」の財布には外側がない(使ったお金はどこかへ移動する)
- 政府の借金1000兆円は、個人と企業の財布に移動した
さらにいえば、実際は「社会」=「国」ではありません。国際社会なので、国同士のお金のやりとりを加味する必要があります。輸出入や為替については、本書を読むとスッキリ解決できます。
また要約記事のつづきとして「投資とギャンブルの違い」についても解説しています。
たっきーの所感
こちらの書籍は学生でも理解できるように書かれた、わかりやすい本です。
タイトルだけ見ると「道徳の話」をしているように感じますが、読み終わると私たちがお金の便利さゆえに忘れてしまった「助け合い(労働)」という経済の本質について語られています。
お金とはどのように誕生したのかに始まり、税金が社会を成り立たせている側面や、税金の使い道に対しての効用。お金が個人と社会を分断させている実状。そして最終的には社会問題である少子化問題、年金問題、投資などについて、私は今までの認識を改めることができました。
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